朝ドラおじさん降臨

朝ドラについてまた、コメントしてみたい。

今回の朝ドラ「舞いあがれ!」は面白い。

クッキンアイドルだったまいんちゃんが、舞ちゃんとは…
NHKも狙ってるな。

いろいろと面白い設定はあるのだが、特に興味深く見ているのは舞ちゃんのお父ちゃんとお兄ちゃんの対比である。

お父ちゃんは町工場でネジをつくる中小企業の社長さん。不況の波にのまれそうになっても、社員のリストラだけはしないよう、無理を重ねる優しい人。人とのつながりを大事にするたたき上げ、と言った感じ。

一方、お兄ちゃんは東大を出て一流企業に就職後、すぐにやめて投資家として自立したエリート。大阪で町工場を営む父については、生産性の低い仕事をやっていると見下している。

それがなぜ興味深いのかというと、この二人の生き方と考え方について、私の経験から、その両方の気持ちが痛いほど分かるからなのだ。

私はかつて金融機関に勤め、デリバティブを扱い、お金を数字としてとらえ、億単位の利益を上げることを当たり前に見てきた。

金融機関にいると、一人の人間が一生かかって稼ぎ出すほどの大金を前に、「金額が少な過ぎる」だの、「こんな儲けの少ない取引、面倒だ」などと、平気で言えてしまうのだ。

ほんとうに、人としての感覚がおかしかったと今では思うのだが、当時はその矛盾に気づかなかったなあ。

多分、お兄ちゃんは現在、こんな感覚の真っただ中なのだろう。

企業の財務分析をして、割安企業や割高企業を見分け、投資を行っていく。儲けがあるかないか、リスクとリターンですべてを判断している状況は、まさに昔の私の感覚かもしれない。

反対にお父ちゃんは人と人のつながりを大切にしている。多分、お金よりも大切なものがある、と信じている。

これは今私が考えていることだ。

お金ももちろん大切だ。お金が回らなければ、会社は生き残れない。
しかし、お金を得ることが目的ではない。人と人のつながりが最も重要なのだ。
お金が有り余るほどあったとしても、周りに心から通じ合える人間がいなければ、生きるのが空しい。
まだ有り余るほどお金を持っていないので、想像上の話ではあるが。

さて、朝ドラは今、リーマンショックの頃の話を描いている。
このリーマンショックこそ、金融機関による驕りが招いた世界的大不況である。付加価値のない、マネーゲームで儲けを得てきた人たちの失敗が、実体経済で懸命に働く人たちを傷つけたのが実態だろう。

お父ちゃんがこんな形で退場になるのは、とても切ないことだ。
きっと現実でも、追い詰められて事業を辞めてしまった人が多くいたのだろう。

ドラマを見ていると、お父ちゃんの脇の甘さが目についたので、多少、自業自得の面はあるとしても、不景気はいつ何時やって来るか分からない。
そんな当たり前のことを改めて教えてもらった気がする。

どんな不況になったとしても生き残っていけるよう、私自身も襟を正して経営していかなければならない。

お父ちゃんの死は無駄にせえへんで!

そして、大切な人を守るために働くことの大切さ、お兄ちゃんも早く気づけるといいな。

秩父で山に登るIT経営者より